シングリッシュの衝撃

 外資系化学メーカーに入社して数日後、私は上司からミーティングに出席するよう指示されました。私にとって新しい職場での初めての英語でのミーティングということもあり、かなり緊張して会議室に入りました。会議が始まり、プレゼンターのシンガポール人が話し始めたとき、私はショックで頭が真っ白になりました。プレゼンターの話す英語が、まったくと言っていいほど聞き取れないのです。
 必死で英語を勉強し、リスニング力、TOEICの点数も大幅に上がったはずでした。それなのに、目の前で話す外国人の英語がまったく聞き取れない。他の参加者を見ると、説明を理解したうえで疑問点を質問したり、プレゼンターと談笑している人もいました。その会議室に10人ほどの日本人がいましたが、転職してきたばかりの私だけが英語を聞き取れていない状態です。身体中から汗が噴き出してきました。 
 シンガポール人の英語と言えばアクセントが強く、「シングリッシュ」として有名です。私はそのことを知っていましたが、実際にシングリッシュを聞いたのは生まれて初めてだったので、その強いアクセントにまったく対応できませんでした。今思い返すと懐かしいのですが、その日帰宅した私は、真剣に悩みました。この会社で今後本当にやっていけるのか?まったく自信が持てませんでした。
 その後多くのシンガポール人達と一緒に仕事をするなかで、彼らの強いアクセントに徐々に慣れていきました。どれくらいかかったかはっきり覚えていませんが、半年くらいでかなり聞き取れるようになっていたと思います。今から考えると、自転車の練習と同じでした。一度慣れてしまえば、何ということは無かったのです。
 インド人の同僚の英語も、最初はまったく聞き取れませんでした。しかしシングリッシュの経験があったので、慌てることはありませんでした。やはり半年くらいかかりましたが、そのクセの強い発音を何とか聞き取れるようになりました。

 世界の英語人口15億人のうち、ネイティブスピーカーは25%しかいません。つまりネイティブスピーカーの英語だけ聞き取れても、真のグローバル人材にはなれないということです。しかし、残り75%の人達が話すクセのある英語の発音を、普通の英語学習で学ぶことはかなり難しいです。普通英会話スクールにシンガポール人やインド人の講師はいません。外資系企業で働き、多様な英語を実戦で学べることは、本当に貴重なことだと思います。

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