年長者の価値が無い世界

 私が外資系化学メーカーに入社して、一番ショックを受けたのが、年功の概念がまったく無いことでした。入社前にある程度想像はしていましたが、いざその環境に身を置いてみると、そのレベルは想像以上でした。
 日本人は普段の生活のなかで、無意識のうちに「年齢」を大事にしています。新聞に有名人や政治家などの名前が掲載される際は、必ず名前の後に(年齢)が入っています。また普段の会話のなかで知らない人の話題が出たときも、性別の次に年齢を聞かれることが多いです。また伝統的な日本の会社で働いていると、新卒一括採用、年功序列、終身雇用というシステムが今でも色濃く残っていますので、入社年次による先輩、後輩の上下関係というものが非常にはっきりしています。入社年次が上の社員に対しては敬語を使い、年次が下の社員に対しては呼び捨てもしくは君付けの呼び方が普通です。一方で先輩社員は新入社員に対して仕事を教え、ビジネスマンとして一人前に育てる役割を担っています。これは伝統的な日本企業では当たり前のことですので、普段意識することもありません。そして多くの場合この上下関係は退職しても続き、退職後に先輩が仕事を斡旋してくれたりすることもあります。
 しかし私の勤めている欧州系化学メーカーでは、中途入社者が非常に多いうえに、年齢に関係なく昇進、降格が頻繁にありますので、役職、年齢にかかわらずすべての社員を「さん」づけで呼ぶことが徹底されています(日本人同士の場合)。たとえ定年退職間際のベテラン社員でも、20代の若手社員を「くん」づけで呼ぶことは許されませんし、もしそういう人がいたら人事部に呼び出されて注意を受けることになります。このため社員同士の会話で年齢が話題になることは少ないですし、普段意識することもありません。
 これは年功という概念に慣れてしまっている普通の日本人にとっては、かなり違和感があると思います。年長者だからといって若い人から敬われたり、丁寧に扱われたりということが一切無く、自分より一回り以上若い人が、上から目線で意見してくることが普通の世界です。人との距離感を測るために今まで無意識のうちに使っていた年齢という物差しが無くなりますので、最初はものすごく戸惑います。私の場合40歳を過ぎてから入社しましたので、最初の半年くらいはその変化にアジャストできず、ストレスで胃潰瘍になっていました。同僚のドイツ人に言わせると、ドイツでは年長者より若い人の価値が高く、尊重されるのだそうです。日本の常識とは正反対です。

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年長者の価値が無い世界” に対して2件のコメントがあります。

  1. 匿名 より:

    日本の企業は年功序列が当たり前ですね。必ず役職で呼ぶことも当たり前です。
    しかし、どこかのタイミングで同期や後輩が上司になる運命です。
    本当の部長以外に、部付部長や担当部長も「部長」と呼んだりします。
    最近は全員をさん付けで呼ぶことが推奨されてきましたが、気まずすぎていつの間にか元通りです。

  2. 日系あるあるですね(^^) 懐かしいです♪

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